※2022年7月13日 文面を一部更新しました。

村上の16号沿いなど直売所の密集地域ではなく、ちょっと外れた島田台の一角に、ほとんど市場に出回ることなく店頭販売のみで売り切れてしまうという人気梨園があるそうなんです。
車でないとアクセスしにくいということもあってか、電話やFAXによる注文販売の量が半端じゃない!口コミで広まったというその人気の秘密に迫るべく、白井良夫さんが生産する梨園「果秀園(かしゅうえん)」へお伺いしてきました。

190819-1.tenpo.JPG

場所は、中山カントリークラブ入口側の道沿い。JA八千代近くにあるクロネコヤマトの通りをひたすら進み、左角に見えるデイリーヤマザキを左折、道なりに進んで左に大きくカーブした先(そこが中山CC沿いの道)に果秀園の看板と直売所が見えてきます。
村上あたりに比べれば通行量も少なく駐車場も停めやすいので、車があればちょいちょいと行きやすい場所かもしれません。
※2022年7月
駐車場が広くなって計9台停められるようになったとのことです。


190819-2.tenpo.JPG

こちらの直売所は、入口の前に自宅用の袋入りや、ちょっとした手土産用の手持ち箱入りの梨が並べられており、お店の中ではケース売りの受付や配送依頼が出来るようになっています。朝採りの新鮮な梨を並べているというこの梨ですが、午前中には完売してしまうことがほとんどだそうです。市場へ卸したり、翌日に持ち越すような余裕はなく、すべてその日のうちに売れてしまうというから驚きです。

190819-4.tenpo.JPG

お店の中がこれまたすごい!
一歩踏み入れると、そこはまさに梨の戦場状態!正面では選果機がゴロンゴロン音を立て、選別し終えた梨の山が右側のスペースへきれいに積み上げられています。そんな様子を上から見守るかのように壁一角を埋め尽くす賞状の数々!
八千代市園芸共進会主催の「八千代市園芸農産物共進会(なし幸水の部)」や八千代市土と緑の祭典実行委員会主催の「園芸農産物共進会」、また「千葉なし“豊水”味自慢コンテスト」など、数々のコンテストで入賞してきたという実績が一目瞭然、表にも昨年受賞された八千代市長賞の記念札が立てられています。

190819-3-2.tenpo.JPG

そんな実力派な果秀園さんですが、どんなこだわりの梨づくりをされているんでしょうか??生産者の白井良夫さんにお伺いしてみました。

「そうだね、特に肥料にはこだわっています。肥料には相当お金をかけていて・・・詳しくは企業秘密だけれどね、うちの畑を見た肥料やさんが“マスクメロンでも育てているのですか?”と言うほどのものを使っています。だから甘みが違うんです。」

190819-5.tenpo.JPG

八千代市梨業組合でも全面的に推進しているエコファーマーへの取り組みですが、この梨園でも環境にやさしい農業を精力的に取り組んでいらっしゃり、認定も受けています。
「減農薬、減化学肥料での栽培というのは、特別エコファーマーになったから始めたというわけではないんですよ。薬を使わず虫被害に効くフェロモン剤も、今はコンフューザー(赤い紐のような形のものを木にぶら下げて使う)という製品が一般的ですが、こうしたフェロモンを使った虫よけが出来たという初期の頃から導入しています。」

190819-6.tenpo.JPG

さらに、収穫時期についてもこだわりが。
「成長を早くしたり生産量を高めたりするホルモン剤(ジベレリンペースト等)は一切使わず、自然に熟した梨を一番最適な時期に収穫して販売しています。梨というのは、置いておけば色がつくけど追熟はしないからね。やっぱり木で完熟したものは味が違うんですよ。それに収穫してから時間が経つと、どんどん梨独特のシャリ感がなくなってしまいます。市場に卸してからスーパーなどに並ぶまでには最低でも3日はかかりますし、流通の間にどうしても傷だらけになってしまいます。たっぷりの水分と食感は、木で完熟したもぎたての梨ならではの特徴ですから、直売所の梨はそういった点で市販のものと大きな違いが感じられると思いますよ。」

190819-7.tenpo.JPG

収穫の時間も、いくら需要があっても朝9時半ぐらいまでで切り上げてしまうそうです。日が高くなってカンカン照りになってしまうと、光のせいでどれもあかく色づいて見えてしまうので、本当に完熟しているものかどうかの判別がしづらくなってしまうのだとか。

そうして慎重に収穫した梨は、店内に置いてある選果機(せんかき)に流され、サイズのふるい分けが行われるのです。
(この日はまだお盆前だったこともあり)収穫量はコンテナ20杯ほどでしたが、最盛期にもなると70~80杯もの梨をもいでくるそう。選果機を導入する前は、この量を白井さんと奥様、息子さんの3人だけでS~5Lサイズなど7種類以上に分類しなければならず、朝から晩までてんてこ舞いだったとか。今では当時と比べ物にならないくらい楽になったとおっしゃいます。

190819-8.tenpo.JPG

こうして無事箱詰めされた梨は、予約先への配送へとどんどん回されていきます。店頭で直接購入されるよりも、電話やFAXでの発送注文が圧倒的に多いそうで、特に収穫量が限られる3L以上の大玉タイプになると、予約分で一杯だとか。お盆過ぎになると、注文しても1週間待ちになってしまうそうです。

190819-9.tenpo.JPG

果秀園さんでは、幸水や豊水などのほかにも、新品種の取扱いもしています。幸水より少し前、8月上旬に販売が始まる筑水(ちくすい)という品種や、10月中旬以降に収穫される王秋(おうしゅう)・新雪(しんせつ)といった種類を用意しているそうです。
そんな品種の話をしていたとき、面白いことを耳にしました。
「梨はね、幸水の木から出来る実の種を蒔いたからといって、幸水が出来るとは限らないんですよ。」

梨はほぼ接ぎ木で増やしていく植物なんだそうです。しかも、同一品種間で実がならず(自家不結実性)、さらに実がなる組み合わせも限定されている(交配不親和性)という難しい性質を持っているので、虫媒花でありながらも人工授粉に頼らないとなかなか難しいようです。実が生るには同じ時期に開花し、しかも親和性を持つものを2品種以上植える必要があるんですって・・・。
梨の話を色々聞いて回っていると、ひとつの作物を育て上げて、しかもおいしい立派なものを作るというのは並大抵なことではないなぁと、あらためて感じさせられます。

190819-10.tenpo.JPG

さて、そんな努力の結晶である果秀園さんの幸水を実際にいただいてみました!手に持った感触は間違っても熟しすぎてぐずぐずといったことはないのですが、包丁の刃をいれたときの滑らかな感じにびっくり。固めの洋ナシでも剥いているかのようなイメージ・・・それは口に入れたときにも同じ印象でした。歯ごたえやシャリ感はあるのに、梨特有のざりっとした粒が無いんです。舌ざわりはあくまで滑らか、ざらつきがありません。
お味はとっても澄んだ優しい甘さで、透明感のある風味がします。甘みがのどに残らず、はじめはちょっと物足りないかな?と思いつつ、でも食べているうちにじわじわとその甘さが引き立ちはじめるという何とも不思議な食後感。
うーん、上品!


今年も八千代市園芸協会が主催する梨の共進会が8月31日(金)に開催される予定です。去年まで3年間ほど村上フルルで行われていましたが、今年はイオン八千代緑が丘が会場に!そこでは、市内の55~60園ほどから自慢の豊水が出品されるので、なかなか直売所まで足を運べない方にはぜひおすすめの機会です。(→詳細はこちら
果秀園の生産者、白井良夫さんの梨も出品される予定です。気に入った梨を購入することもできるので、ぜひ足を運んでみてはいかがですか?

【追加情報 H19.9/1】

平成19年8月31日(金)に開催された「第22回八千代市園芸農産物(梨・豊水の部)共進会」にて、今年も白井さんの梨が八千代市長賞を受賞しました!(→詳細はこちら

2年連続受賞という快挙を成し遂げた白井さん、さぞお喜びのことと思い、さっそく翌日に直売所へ向かいましたら・・・ありました、ありました!去年の札の隣には、真新しい札が!!

190901-1.blog.jpg

お顔を拝見した途端、「ちゃんと写真撮れてた?撮れてた??」と確認するその様子に、思わず噴き出しそうになってしまいました。
ちょっとカメラが遠かったのですが、ちゃーんと受賞の瞬間を納めてきましたよ!

190901-6.blog.jpg

この日は、豊水のほかにも面白い梨がありました。「秀玉(しゅうぎょく)」というかなり大玉な青梨です。その大きさもさることながら、味わいまで逸品だなんて!これは贈答用にもぴったりです。(・・・でも、数が少ないため梨園マップの収穫品種リストには掲載していません。気になる方はお問い合わせを。)

190901-2.tenpo.jpg


●果秀園(かしゅうえん) 047-450-3212
千葉県八千代市島田台728-2(地図
営業時間/9:30~(売り切れ次第終了)
※八千代ナビ!八千代の梨園マップ