【追記】2020年7月6日
一部修正しました。

【追記】2011年8月17日
今年直売所をリニューアルした幸果園さんを拝見してきました!(レポート末尾)


〔店舗情報〕
●幸果園(こうかえん)
【直売所】千葉県八千代市村上750-15(地図
【直売所開店期間】8月上旬~10月末頃まで
【営業時間】10:30~
【店頭以外の注文方法】FAX 047-483-7348 または インターネット注文
【駐車場】有り
【梨もぎ体験】豊水の時期(9月下旬)の平日に限り対応可。入園料無料、収穫した梨は1kgあたり800円~で買取。要予約。
【ブログ】http://koukaen1174.livedoor.blog/

〔体験レポート〕
2007年10月9日

「納得いただける良い商品を作ることが一番!けれど、それだけでは本当に満足いただけるとは思いません。心を込めた接客はもちろん、少しでもニーズに添えるよう努力しています。」

どこかの一流企業で素晴らしい理念を聞いているようですが、お話されているのは会社でもショッピングセンターの方でもございません!今回も、間違いなく梨園レポート。実は、八千代市村上の梨園「幸果園(こうかえん)」の奥さんが語っているんです。

年に1回、多くて2~3回ほどしか顔を合わせないお客さん、けれども毎年足を運んでくれる常連さん。その一人一人を出来る限り記憶し、短い時間でも楽しい会話を・・・と、年1回の接客に心血を注いでいらっしゃるというのですが、こちらの梨園はリピーターさんを数えきれないほど抱える超人気店!口コミで広まり、雑誌danchu(ダンチュウ)をはじめ、多くのTV・雑誌等のメディアで紹介されている話題の梨園だけあって、市場に出荷する前に店頭で売り切れてしまうのだそう。そうした状況でも、声を嗄らしながら笑顔で色々語ってくださった梨園「幸果園(こうかえん)」のご主人と奥さんに、その人気の秘密を伺ってきました。

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↑ 16号を柏方面に向かって宮内交差点(右前方にセブンイレブン)を右折したらすぐ右手にあります。

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↑【追記】2020年の様子。2年前の塩害で電光掲示板が壊れてしまったのを機に、看板が変わっています(裏表で違うデザインなんですよ!)

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↑ 【追記】2011年8月、直売所がリニューアルされ、こんな外観になりました!

一番の特徴といえば、「大玉専門店」と呼ばれるほど、品種に関わらず大玉がゴロゴロ販売されているということ!大きいと、つい“大味”なんじゃないかしら?と思ってしまいますが、梨は大きくなるほどおいしいのだそうです。
「うちは幸水でもMサイズなんてほとんど出来ません。豊水になると、3Lサイズでも小さいくらいです。とあるお客様から『ショッピングセンターで贈答用の幸水梨を注文しようとしたけれど、一番大きいサイズで2Lまでしか無いと言われた』とお伺いしたことがありますが、うちで大玉と言えば3L以上!贈答用として箱買いされるお客様は幸水だと4L~5Lが売れ筋です。一般的に数が採れないとされている大玉は市場で大量販売出来ないようですから、なおさら“市場では買えない大玉を送りたい”というニーズが高いようです。」

梨は同じ5kg箱でも詰めるサイズが小さくなるほど値段が安くなるので、価格を理由に小さいサイズを選ぶ方も少なくありません。ですが、実際に食べ比べてしまうと「やっぱり大玉の方がおいしい!」と気が変わって、大抵大玉を希望されるんだとか。
とはいえ、なかなか大玉になりにくい幸水。注文したくても収穫量によって順番待ちになるケースが多い品種ですが、ここ幸果園では大玉だから・・・という心配は御無用!4Lや5Lがわんさと採れるらしいのです。収量だけではなく、サイズも並外れたことに!大きいものだと新高ほどにもなるそうで、“ジャンボ幸水”と呼ばれて目玉商品になっているとか。

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そんな大玉自慢な幸果園さんですが、自然と大玉ばかりが生るわけではありません。毎年並々ならぬ努力と技術を注いでいるからこそ、大玉狙いのお客さんに応えられる質と量を維持できているのです。

「梨を作るうえで、やらなきゃいけないことは決まっています。“それを全部やれるかやれないかで、梨の出来が違ってくる”と、うちのおじいちゃんはよく口にしてますよ。収量を増やそうとすずなりに実をつければ大玉になりませんが、間引いただけでは収量は増えません。長年培ってきた技術と勘、それに出来る限り手をかけ目をかけ健全な木に育て上げていくことで、大玉且つ高い収量を得ることができるんです。
特に幸水は、育て方によって収量が3倍ほども差が出るほど難しい品種だと言われていますし、天候が過酷な年ほどそれが顕著に結果として出てきます。」

健全な木に育てるために、有機肥料の使用や減農薬などはもちろん、天災による被害を最小限に抑えるための投資も欠かさないそう。そのひとつが「多目的防災網(たもくてきぼうさいもう)」と呼ばれる網を掛けることなんだとか。

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多目的防災網の使用が特に広まったきっかけというのは、ヒョウによる被害だと言います。生り始めた小さな実に少しでもヒョウがかすれば、もう黒く傷がついて売り物にならなくなってしまうそうです。小指ほどのヒョウは木の皮をもビリビリにし、実や葉を落下させてしまいますが、この防災網によってそうした災害を最小限に抑えることが可能になりました。
「年がら年中かけているわけではなく、必要な時期だけ網で畑全体を覆います。この網をかけたり巻き取ったりを、家族総出で数日かけて行うのですが、それはもう大変な労力なんですよ。梨の枝はどんどん上に伸びていきますし、それを妨害したり折ったりしないように気をかけながら、はしごを使って網を張っていきます。途中どこかにひっかかれば棒でつつき、声を掛け合いながらの力仕事!」

霜も対策を怠ると大ダメージを被るんだそう。“霜による影響”といっても何だかイメージが湧きませんが、花が凍ることでめしべが真っ黒になってしまい、実がつかなくなるんですって!しかも、最近は暖冬で開花時期が早まる傾向にあるため、輪をかけて霜の被害に遭いやすくなっているとか。
そこで活躍するのが「防霜(ぼうそう)ファン」という送風機。冷え込みが激しい地表から数メートル上には、逆転層と呼ばれる比較的暖かい空気がたまるのだそうで、その位置あたりに防霜ファンを取り付けることで下へ空気を循環させる仕組みです。万一花が凍っても、ゆっくりと解凍されるため被害から免れることができるとか。

「大きな被害に遭った時に、速やかに機器や道具を取り入れるか、“もうこんなひどいことは無いだろう”と様子を見てしまうか。この判断で差が出ます。惜しまず資本投資できるか?これが同じ失敗で苦労しない一番の策ですね。」

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こうした“手をかける”投資と並んで、重要視しているのが“目をかける”ということ。幸果園の奥さんは、お父さんの見回りの勘を絶賛します。
「うちのお父さんって、木が今何を欲しがっているのか、ダメになっている部分がないかがパッと分かるのよ。なかなか気付かないようなちょっとした赤ダニも、どうしてかすぐに気付くんです。これを放っておけばすぐに大量発生へとつながるけれど、大抵未然に防ぐことが出来ています。そうした梨の小さな異変を察知できる鋭い観察眼、そして長年の経験から養われてきた勘が、木の健康を維持できている要素のひとつですね。」

形の良い大玉を収穫するため、特に力を入れているのが授粉作業だそう。そもそも、梨は同じ品種同士では実がならないというやっかいな性質をもっています。そのため、多品種を混植して蜂や風によって花粉を運んでもらうか、あるいは違う品種の花粉を人工的に付けてあげないと授粉できません。
普通に考えれば、混植すれば手間がかからないのでは?・・・と思うところですが、品種ごとにきちんと人工授粉を行うそうです。
「形の良い梨を作るには、授粉が重要なんです。梨には授粉できる場所がひとつのめしべに6か所あるのですが、すべてに授粉できて初めて丸く形のよい梨に仕上がります。けれど、ミツバチなどが花粉を運んで4か所とか5か所しか授粉しなければ、いびつな形になってしまうんですよ。一度授粉してしまった花に、あとで追加して花粉をつけてももう手遅れ!なので、蜂に邪魔されないように多目的防災網を早めにかけて、蜂が入らないようにしたりしています。」

虫の力を借りれば、いびつな形になってしまうかもしれないけれど、少なくとも梨が収穫出来る可能性は広がります。けれども、こうして網を張って一切を人工授粉で賄うというのは、人工授粉に手慣れていない場合はかなりリスキーなんだとか。熟練した技術と相当な人手が不可欠な作業だそうです。
「一番良いタイミングで授粉できる時期というのは、開花後2~3日。梨全体での受粉期間は10日程度と、大変短い時間での勝負になるんです。授粉作業が間に合わなければその木には実が生りませんが、もし雨が降れば作業が中断されてしまいます。とても家族など身内だけでは人手が足りませんので、毎年パートさんなどをお願いして人材を確保しているほどですよ。」

人工授粉するための花粉づくりも、相当な技術を要します。開葯器(かいやくき)という機械で加熱保温して花粉を集め、絶妙なバランスで配合した自家製の花粉をはけで塗っていくそうですが、これも天候などの状況に応じて薄めたり濃い目に作り直したりするんだとか。この判断を誤ると、きちんと塗ったとしても授粉に結び付かず、木にまるまる実がならない・・・というケースが生じることも。

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そうして実った貴重な大玉梨。そのままでも十分魅力あふれる品ですが、さらに“接客”という付加価値が、幸果園さんならではの逸品に仕上げるのです。

「毎年足を運んでくださるお客様を裏切らないために、美味しい梨を作るというのは大前提。プラスアルファとして、お客様との時間を大切にすることを常に考えて接客しています。お帰りの際には、少しでも幸せな気持ちになってもらえれば何よりですね。」

何がすごいって、去年1回会ったっきりのお客さんと、最近まで顔を合わせていたかのように話が出来ること!私たちお客の立場からすれば1軒のお店ですが、お店から見れば自分なんて大勢の中の一人。覚えていてくれるだけでも嬉しいのに、去年話したことまで記憶してくれていたらビックリするやら親しみ深くなるやら。
それは幸果園へ毎年訪れる方々も同じ思いのようで、「おしゃべりするのも楽しみなのよ!」と声をかけられることも多いとか。
その接客スタイルを確立したのは、何と言っても凄まじい記憶力!相手と交わした会話や顔、それにどういう接客を以前望んでいたかということまでを、出来る限り頭に叩き込むそうです。そして翌年、記憶の糸をたぐりよせつつ、ああ!あの方は去年娘さんに赤ちゃんが生まれるって言ってたわ!と思いだせば「今年はお婆ちゃんになりましたねー!」なんて声をかけてみたり、短い時間でも会話が弾むきっかけを作っていくんですって。

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そんな心がけが通じ、お客さんにとても慕われている幸果園さん。お店のアピールをも積極的にしてくださるそうで・・・。
「この直売所の後ろに貼ってある『祝 平成十七年 千葉県梨味自慢コンテスト特別賞受賞』の文字、こちらはお習字を嗜んでいらっしゃるお客様が書いてくださったんですよ。今まで色々と賞をいただいてきましたけれど、何だか恥ずかしくて賞状なんて飾ったこともなかったんですけどね。お客様から『受賞した梨園だとアピールするのは、送り主としても嬉しいものなのよ。信頼性だってアップするし!』と後押ししていただいたこともあって・・・折角なので平成17年に頂いた賞状2枚も一緒に飾らせてもらいました。」

このお習字を書いていらした方、とってもマメな奥様だそうで、新高ジャンボ梨という文字も書いて、さらにパウチしたものまで持ってきてくださったんですって!しかも、それを立てるものも日曜大工好きなご主人が制作。ぜひPRしてくださいね!とおっしゃるそのお客さん、かなりの幸果園さんファンでございます。

PRのことのみならず、お客さんとの会話の中から引き出されたニーズに応える努力も惜しみません。そのひとつが“3キロ箱”を用意したことだとか。

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最近は核家族化で夫婦2人のところも多く、5kgは食べきれないという声も多かったそう。個数を減らすために4Lサイズほどの幸水を送ろうと思うと結構な額になってしまいますし…。
そうした状況をクリアにしたのが3kg箱!送料も割安になりますし、「良いものを少し」というニーズを見事に実現したことで、若い方が両親に送ったり、今まで量が多くて送れなかったお婆ちゃんの家にも送れるようになったりと、送り先にも広がりが出来たそうです。

ですが…今まで5kg買ってくださったお客様が3kg箱に流れてしまうとなると、売り上げの面で厳しかったんじゃないですか?
「確かに、この箱を作ろうと検討したときには、そういう心配がないわけではなかったんです。けれども、それよりお客様のニーズに応えるためには3kg箱は不可欠だという状況が、背中を押してくれました。
先日も、3,000円程度でお返ししたいけれど、5kgだと大玉の良い梨ではお返し出来ない!と梨を選択からはずそうとしたときにうちへ来てくださったんです。3kg箱があったからこそ、5Lサイズを6玉入れて3,500円でお作りすることが出来たんです。他にも、マグカップをご持参されて、これを一緒に送りたい!とおっしゃいましたので、ひとつ分の梨を抜いてところに入れて送ったこともありました。お客様のニーズは本当にバリエーション豊かですが、出来るだけご要望に沿えるようとことんお付き合いしてますよ。」

そうそう、この箱側面に書かれた“やちよの梨”の文字。あのお習字の奥様が書いてくださったんですって!

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それにこちらの「お願いシール」も先様に美味しく食べていただくために始めた独自サービスのひとつ。完熟した梨をもぎたてで送るわけですが、リンゴなどのように長持ちしない幸水は、段ボールから取り出さなければ痛んでしまいます。そこで、目立つように黄色のシールで「日持ちがしないので、野菜室などの冷暗所へすぐに移してください」というお知らせを外箱に貼るようにしたそうです。ちなみに、3kg箱には初めから印刷して作ってあります。
「冷蔵庫じゃなくて、野菜室に入れてくださいね。傷がついていないものなら1~2ヵ月は持ちます。前にも、忘れた頃にうちの野菜室から幸水が出てきましたよ。折角お客様が思いを込めて贈った梨ですから、ダメにしないでもらいたい!そのために出来る企業努力です。」

幸果園さんは、以前NHKの番組「食卓の王様」に“親子3代梨作り”というタイトルで取材を受けたことがあるそうです。その際、「梨がセールスマンなんですよ。」と表現したことがとても評判でした。
「自分達が営業に回らなくても、送られた方から梨の注文をいただくんです。梨をしっかり作っているからこそ、その味が営業してくれる。それを“セールスマン”と例えたんですね。ふと思いついて口に出た言葉ながら、全くその通りだと思いました。」

そのお話のとおり、この直売所でも大抵用意している通称「1,000円袋」にも余念がありません。
「勿体無いからと、何でもかんでも袋に詰めたら購入した方にはこれが幸果園の梨だと思われてしまうでしょう。配送に回らないサイズを袋に入れますが、自分がもし袋に入っていたら嫌だなと思うようなものは決して入れません。そういうお金を取れない梨は、売らずに『ご自由にお持ちください』のコーナーに回します。基準を緩めないから、うちの1,000円袋は美味しいと評判ですよ!」

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「大玉は決して安くはありませんが、価格だけで判断しないで欲しいんです。配送ひとつとっても、場所によってはパックにしっかり収まらないサイズを送るところもあると聞きますが、うちはキツキツにパックに詰まった状態で、責任を持って先様にお送りします。梨の美味しさを追求し、それだけの投資をしています。」

梨園の名前どおり、梨という果実に幸せのせて、今年も多くの方々に笑顔を提供している直売所「幸果園」さん。梨シーズンも終盤ですが、まだまだ八千代の直売所めぐりは楽しめそうです。

【追記】2011年8月17日
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宮内交差点そばにある幸果園さん。
場所はそのままに、直売所の建物が新しくなりました!

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↑ 箱売りスペース、受付カウンター、配送申し込み用紙に記入&試食テーブル、とすっきり分かれたレイアウトになりました。奥には箱詰め作業を行うスペースもありますが、あまり目に入らないためか店内がとてもスマートな雰囲気に!

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↑ 用紙記入&試食テーブルが広々!駐車スペースも以前から広めでしたが、より停めやすくなった感じがします。

幸水梨の様子も拝見してきました!
今年は春先に低温が続いて開花が遅れてしまったそうで、どの梨園も10日ほど最盛期が遅れているとのことでした。幸果園も収穫量がまだピークではないのですが、お盆で梨の需要が高まっているため配送や当日販売分も数が限られてしまっているとか。
20日前後にはかなり安定してきそうです。

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↑ 今年は雨量が少ないので小玉サイズになりがちということでしたが、大玉づくりに力をいれているだけあって、5Lサイズの幸水もしっかり並んでいました。

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↑ 夕方近くに伺ったので、もう1,000円の袋は売り切れー!毎日のように注文が殺到しているとのことで、配送用に詰められたオリジナル箱が山のように積み重なっています。

相変わらずご夫婦でとってもにこやかに対応されていまして、夕方の閉店間際だというのにひっきりなしにお客さんが訪れていた幸果園さん。
今年も甘みののった美味しい梨に仕上がっているとのこと、ぜひキレイになった直売所へ足を運んでみてはいかがですか?

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〔店舗情報〕
●幸果園(こうかえん)
【直売所】千葉県八千代市村上750-15(地図
【直売所開店期間】8月上旬~10月末頃まで
【営業時間】10:30~
【店頭以外の注文方法】FAX047-483-7348 または ネット受付(2020年準備中)
【駐車場】有り
【梨もぎ体験】豊水の時期(9月下旬)の平日に限り対応可。入園料無料、収穫した梨は1kgあたり800円~で買取。要予約。
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