空手や少林寺拳法、太極拳、合気道、剣道、柔道・・・
ひとくちに「武道」と言っても色々ありますが、いろんな武術を総合的に取り入れて礼儀正しく心身をたくましく育ててくれるというのが、今回ご紹介する「玄気道(げんきどう)」です。
船橋が発祥の地で、昭和63年頃に「総合的にさまざまな武術を習えるものを」というコンセプトで立ち上げられ、今では千葉県を中心に数多くの支部があり全日本大会まで行われているとか。
ひとつの武術に絞らず、総合的に・・・というのがポイントで、具体的にはなんと!
『空手・拳法・柔術・護身術・器物術・小太刀・気功など、幅広い分野を包含する総合武道スポーツ』と紹介されています。
特に他の武術との大きな違いは、ヌンチャクの練習があること!
両手で左右同じように道具を使うので、型を中心とした練習では得られない効果が期待できるらしい。テレビなどでも「スポーツヌンチャク」の武術として、玄気道がたびたび取り上げられているようです。
とはいえ、総合的って・・・全部をミックスした武道なの?
それとも、各武道の要素をピックアップして練習するの?!
何ともイメージしにくい謎のおけいこ、「玄気道」の練習風景を見学させて頂くべく、八千代市民体育館の第一部同室へ見学に行ってきました!
生徒さんの年齢層はとても幅広く、4歳~5歳くらいの園児~小学生から、中学生・高校生、成人の男性もいらっしゃいます。親子で参加されているケースも多いんですって!
小学生の女の子が思っていた以上に多かった!
▲ 背中に「玄気道」と刺繍が入った白い道着に、段によって色の違う帯を巻いた恰好。
「玄気道 八千代」の講師を務める岩木先生は、武道有段者としてさまざまな場所で指導しているほか、実は成田街道沿いにある「勝田台げんき整骨院」の院長先生でもあるんです。
整骨院の先生のお立場から見た、玄気道の良さとは?
『普段使わない筋肉を動かしますし、特に肩回りをよく使うので、肩こり解消など体をほぐす効果があります。そして、大人には負担のない、良いダイエットにもなりますよ!とにかく無理せず、できる範囲で行うので、年齢問わず参加できる良いスポーツだと思います。』
▲ 稽古が始まる前に、軽くモップ掛けなどの清掃を行います。(写真右側が岩木先生)
そうこうしているうちに、先生の声掛けで、突然二人一組になって何度もじゃんけんをし始めました!
どうした?どうした?と思ってよくよく見ていると・・・
あ、負けたほうが少しずつ足を開いてるんだ!
こうやって遊びながら、股わりストレッチをしているんですって。
しばらくすると、片方の子がだんだん体勢を崩して転んじゃうので、また次のパートナーを見つけてじゃんけんバトルが繰り広げられるのです。
▲ そんなにひらくのー?!見ているだけで痛い・・・。
玄気道の稽古の流れを大まかに紹介すると、礼節 → ストレッチ → 基本練習 → 礼節。
礼節に始まり、礼節に終わる。
さすが武道だけあって青少年健全育成の理念も高く、玄気道では『優しさと粘り強さを持った素直な子どもを育てること』を目的としています。技の体得だけではなく、知識・徳育・体育の基本を学ぶこと、そしてチャレンジ(挑戦)、コントロール(調整)、コンシダー(思考)を身につけさせることも、大切な稽古。
その一番の根っことなっているのが、礼節ということなのです。
の、はずが・・・?
ようやく中央に全員が集まって、岩木先生を前に正座をしたかと思いきや。
両手を前に突き出して、再びのじゃんけんが!!
▲ しかも、掛け声はなぜか「シザーズ、ロック、ペーパー」。
それから道場訓を斉唱したあと、「心を空っぽにします」との声掛けで、ほんの一瞬だけ瞑想の時間を挟んでから、一斉にお辞儀をしてストレッチへ。
ものすごくリズミカルに、そして息つく暇なく早々と準備運動がなされていきます。
そのストレッチも掛け声が面白くて、
♪ いっちにー、さんし、
♪ ワンツー、スリーフォー
♪ イーリャン、サンスー
・・・多国語!!
圧倒的に小学生の子どもたちが多い道場ということもあって、とにかく元気!!
稽古が始まる前まで、武道室に入った瞬間から駆け回ってはしゃいでいる様子に、子どもらしい!と思いつつも・・・先生もいらっしゃるのに、何だか緊張感がない?
イメージしている武道の習い事って、もっと厳しい雰囲気だと思っていたんです。
ところが、まずじゃんけん股わりが始まると、それぞれ駆け回っていたのをやめてじゃんけんに夢中になり、それから中央に集まって礼節の流れが進むごとに、どんどんと顔つきが変わっていくのが分かりました。
変わったことをするなぁ・・・とあっけに取られていましたが、これらはすべて、稽古へと気持ちを自然と引き込むステップなんだと、このあたりでようやく気が付きました。
ここからは、稽古の主となる基本練習です。
練習の内容は、決まった大きな流れはあるものの、毎回違ったことに取り組むそうです。
色々なことをやるから、飽きずに続けられるんだとか。
まずは技の全体練習から。
『突き技の練習、お願いします!』という岩木先生からの声掛けで、小学校1年生の時から入会し、現在大学生というお兄さん(黒帯)が誘導役として前に立ちました。
さすが上級者の方は、指導もされるんだ・・・と納得した直後、さらに先生は、まだ黄色帯の男の子と女の子までも指名し、黒帯のお兄さんの左右に立つじゃありませんか!?
前に立つだけでもドギマギしそうな年齢に見えるのに、凛々しく空手の技を決めていきます。
「手刀打ち!10本いきます!」
「上げ受け!」
「エイ!」
「エイ!」
掛け声は、大人の男性が混ざっているため、耳にガンとくるほど。
キリッとした空気が、道場一杯に行き渡ります。
▲ 蹴り技の基本練習も。別の人が指名されて、見本となって誘導します。
その後の呼吸法の練習では、まだ入会して間もないであろう、白帯のかなり小さなお子さん2名だけが前に立って、堂々と誘導していました。
岩木先生によれば、こうして前に出て大人の人にも指示をする経験が、子どもの自信を育むため、いろいろなタイミングで誘導を任せるようにしているそうです。
「いち!に!さん!」と人前で大きな声を出すことも、子どもにとってはなかなか難しいでしょうけれども、稽古の中で経験を積んでいくと自然と発声もしっかりしてくるとのことでした。
▲ 生徒が誘導している一方で、先生はミットを持って個別に指導。
技などの全体練習を15分程度行ったあと、気になっていたヌンチャクの稽古に移りました!
ここからは、4つのレベルに分かれて進められていきます。
白帯~オレンジ帯を締めている園児~初めての子は基礎を、小学生は簡単なヌンチャクの型を、大人はより高度な型、そして黒帯の上段者は創作演武の練習です。
玄気道で使うヌンチャク(二本の短い棒を、短い紐で結んだもの)は、手持ちの部分がスポンジで出来ています。本物は樫の木を使用しているそうで、それは当ると相当痛くて危険なので、有段者でもまれに使用する程度のようです。
その持ち手をつなぐ部分が、大人はチェーン、子どもは太い紐で出来ています。
両方持たせてもらったのですが、持ち手はとても柔らかいスポンジで、子ども用はとても軽い!
一方、大人用はさすがにチェーン部分がずっしりとくるので、スポンジと言えどもコレを回すのは結構恐怖・・・。
一番最初に覚える基本の形は、
①左手でヌンチャクを後ろに回して、右手を前から左側の脇腹へ持っていってキャッチ。
②右手に持ち替えて後ろに回して、同じように再び左手に持ち替える
という動作とのこと。
とても簡単で、なんてことはないように見えます。
▲ 基本を練習する、幼児の子どもたち。
とても簡単で、なんてことはないように見えます。
▲ 基本を練習する、幼児の子どもたち。
岩木先生から、『どうですか?なび子さんもちょっとヌンチャクを体験してみませんか?』とお声掛けいただいたので、子ども向けのヌンチャクを使って基本中の基本の動かし方に挑戦してみたのですが・・・あれ、思っていたより全然できない・・・。
しかも、なんだか左右でやりやすさが違う!?
『ひとつの物を両手で扱う武器と違って、ヌンチャクは左右のバランスを整えるのに良いアイテムです。右脳の活性化を図り、集中力・記憶力を高めるとも言われています。特に集中力の面では、こうした武器を持った場合は、型の練習に比べて格段に集中度が増します。スポンジとは言え、勢いのついた持ち手が当たればそれなりに痛いので、集中せざるを得ないのです。』
中高生~大人は、少し難しめの型を練習します。
小学生でも上手になると、ここのレベルで一緒に型を学び、より高度なベテランチームへと移動することもあるとか。
この日は、全員男性の方々。
以前から何かの武道をなさっていた方ばかりではなく、ほとんどが全くの初心者で入会されているそう。
思えば気軽に始められそうな男性の習い事って、意外と思い当たりませんよね。
ヨガやエアロビは女性が多いし、男性が多そうなフットサルも経験が全く無いとなかなか踏み切れなさそう・・・。
結局、ゴルフやフィットネスクラブくらいしか出てきませんが、ここなら体力面を気にせず自分の出来る範囲で取り組めるそうなので、退職後の趣味として通うことも十分可能です。
実際、60代で習い始める方も多いようで、お孫さんと一緒に通われている方もいらっしゃるそうですよ!
ベテランチームは、創作演武の練習をしていました。
創作演武とは、各個人がさまざまな技を用いて自由に、創造性豊かに演武を組み立てて披露するものです。
考えた1分半の内容を、その後に披露する時間もありました。
赤い枠の中での演武を、他のグループに見てもらうのです。
この「見られる緊張」に慣れる機会は、他の小学生や大人のチームにもあるそうで、こうして見られることを普通にすることが、上手くなる第一歩!
大会でも普段通りの力を発揮できるようになるとのことでした。
大会でも普段通りの力を発揮できるようになるとのことでした。
▲ ベテランチームで活躍している小学5年生の男の子!ふたつのヌンチャクを操ります。
ヌンチャクを片付けたあと、再び先程のレベル別のグループに分かれて、空手の型の練習です。
型とは、相手がいることを想定して行う連続した動きのこと。色々な技の組合せで、攻防の演技を行っていくそうで、集中力や瞬発力が高められるとのこと。
ベテランチームは型を二人で作る「相対演武」に取り組みます。実際に技の攻防を事前に取り決めて、何回かの練習日を経て、協力し合いながら演武を作り上げるそうです。
そうそう、ヌンチャクの時もそうでしたが、小学生たちの前に立って指導しているのは先生ではないんですって!あくまで、帯の上の人が下の面倒を見るという関係で成り立っていて、子どもたちに教えているのも固定の決まっている講師の方ではなく、毎回大人の生徒の中で交代しているそうです。
「玄気道 八千代」のモットーは、『無理しない・強制しない』。
低学年のうちは、稽古というよりは遊びの延長でも構わないと岩木先生。
『とにかく楽しめることが大切!出来るようになると面白くなります。面白くなれば、練習をもっとやってみようかな?という意欲が自然と湧いてくるもの。武道というのは、ハマるとどんどん上達します。』
▲ 練習中にも、ふと溢れる笑顔。アットホームな雰囲気も魅力です。
『ほかの武道は、形の練習と組手といったひとつふたつ程度です。
けれども、玄気道なら、技の練習がつまらないな・・・と思っても、例えばヌンチャクが好き!空手の型が好き!といった、自分の好きな練習が稽古の中で回ってきたりします。
好きな練習は集中できるものです。
それで、良いと思っています。
また、武道を通じて、他の園・学校、クラスの子と交流が持てるのも大きいですね。
いろんな年代の人、いろんな人との関わりは、必ず何かしらのカタチで将来に役立つはずです。』
最後に、帯の色で分かれて「試験科目」の練習も行われました。
平均的には半年に一回くらいの割合で、帯の色が変わるようです。レベルも、最初は型を覚えることから始まりますが、3年ほど過ぎた頃から、創作した型を披露できるようになるとか。
子どもにとっても、この試験は良い目標になっているそうです。
黒・茶帯の方々は、受け身や投げ技の練習もしていました。
投げ技については、子どもの場合は遊びでやってしまったりして怪我をしてしまう恐れがあるため、小学生でも相当レベルに上がるまでは教えないそうです。
▲ 投げ技の練習では、岩木先生が指導に加わる場面も。さすがベテランチームは、受け身をして起きあがるときの足さばきまでも恰好良い!
18時半を過ぎた頃、そろそろ終了にします!という声掛けで、終わりの礼節を取るために全員が中央へ集まりました。正座にもきちんとやり方があるようで、『女の子はひざを閉じて、男の子はこぶし二つ分あけて』との指導が入ります。
『今日、受付であいさつをしたひと?!』と、岩木先生。
自分から挨拶するといいですね。
言葉遣いも大切です。
練習のとき、「やばい」って言っていませんか?
どろぼうは「やばい!」と言って逃げます。(「やばい」は江戸時代の泥棒が使っていた隠語です)
道場では、汚い言葉をつかうのはやめましょう。
「やばい」ではなく「大変だ!」と、美しい言葉に変える意識を持ちます。
あとは、相手の名前を言うようにしましょう。
分からないときは、帯を見れば書いてありますね。
では、隣同士でやってみましょう
「What's your name?(ここも英語なんだ!!)」
そんなお話のあと、突然の暗算がスタート。
1たす1は2
2たす2は4
「はい、りょうくん続きをお願いします」
2048たす2048は・・・
8192たす8192は・・・
16384
▲ では、今日はここまでで終わりにしましょう。『有難うございました!!』と、お互いに礼。
・・・何とも、何とも、最後まで不思議で面白い、でも惹き込まれるような稽古でした。
こういう風に多国語を使ってみたり、足し算し始めたりなんてことは、他の道場でもやっているのですか?
『ほかでもやっているところはあるようですよ。私は、何かこうしたことがきっかけで、色んなことに興味を持ってくれたらという思いで取り入れています。』
岩木先生が大切だと思っていること。
それは、まずは挨拶・礼儀。
練習の中で、正座など日本古来のものをきちんと伝えられるように気を配っているそうです。
そして、子どもの元気をのびのびと育むこと。
そういえば、練習中に「~しちゃだめ!」といった類の声が聞こえませんでした。
これは意識してのことだそうで、子どもをまずは萎縮させないように声掛けも工夫しているとのこと。
『やりたくなれば、放っておいてものめり込みます。その前に、とにかく嫌にさせないことが大切です。また、なるべく沢山声を掛けてあげたいとも思っています。子どもは「話したい!」という気持ちに応えると、満足してくれますのでね。』
いやいや。
本当に、あっという間に時間が経ってしまいました!
次から次へとやることがたくさんあるので、動かない時間が無いくらい!
入会時期がバラバラでも、全員で同じことをやったり、実力に応じて個別でメニューが組まれたりして、内容がとてもバランス良く感じました。
上手な人と一緒に練習することで、憧れも生まれますしね!
集中しているけれど、笑顔もある。
とっても雰囲気の良い、武道なのにどこかアットホームな玄気道の練習風景でした!
♪ おまけ情報
そうそう、習い事と言えば、保護者が関わる頻度も気になるところですよね。
伺いましたら、ほとんどのお子さんは送迎のみで、付き添いされている保護者の方は少ないようです。小学校1、2年生くらいになって、安心できる程度になれば送迎だけで大丈夫そう。
練習前後にこの第一武道室を利用する団体があるので、予定時間が大幅にずれ込むこともなく、送迎のタイミングに困ることもあまり無さそうに見えました。
お月謝以外に、最初に道着とヌンチャク、帯を揃えるための費用がかかるそうです。
道着は1着1万円前後するそうですが、帯で調節できるので幼少時代なら3年程度はサイズアウトせず着られるそうですし、成人ならひとつの道着を長く着られます。ちなみに先生は、今の道着を10年くらい使用されているのですが、ところどころほころびが出てくるのも味があって良いとのこと。
見学・体験はいつでもOK!
ぜひ気になる方は問い合わせてみてくださいね。
●空手拳法「玄気道 八千代」
【募集対象】5才~70才の男女
【お問い合わせ】090-3542-1983(岩木吉光)
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